形式:対面とオンラインの併用(ハイブリッド)形式
1.開会の挨拶および台風科学技術研究センター(TRC)のご紹介
横浜国立大学 台風科学技術研究センター センター長 横浜国立大学 教育学部 学校教員養成課程 教授
筆保 弘徳 先生
コロナ禍以前より横浜国立大学筆保研究室と神奈川支部では、毎年3月、卒論修論発表会を兼ねた合同例会を行ってきました。今回、5年ぶりに両者の「再会」です。その5年の間に立ち上げた台風科学技術研究センター(TRC)の歩みやその概要、そして今後目指すところなどご紹介していただきました。
2.招待講演 横浜国立大学 台風科学技術研究センター 准教授 横浜国立大学 大学院環境情報研究院 准教授
吉田 龍二 先生
気象・気候モデルの開発現場と昨今の課題
米国海洋大気庁(NOAA)や米国エネルギー省(DOE)で高解像度の次世代気候モデルの開発に携わったお話を伺いました。従来の気候モデルには低層雲の過小評価、二重熱帯収束帯の過大評価などの問題があり、その性能向上を目指し、より高解像度モデルの開発を行っている。また、格子間隔870mの全球モデルをシミュレーションするために、必要な計算時間、扱うデータ量、描画サイズからスーパーコンピューターの使用料といった計算機側の様々な実態もわかりやすく説明していただきました。他にも米国コロラド州の風景の紹介やそこでの生活など、研究以外の話もあり、とても有意義な時間を過ごすことができました。
3.横浜国立大学 筆保研究室および吉田研究室 卒論修論発表会
【ムーンショットチーム】〜筆保研究室4名
・細木隆史さん「OTECを想定した台風減勢感度実験」
海洋温度差発電(Ocean Thermal Energy Conversion :OTEC)は深層水を利用するが、深層水をくみ上げると海面水温(ST)が低下する。それにより、台風を弱体化させる事が可能である事をシミュレーション実験で示した。
・工藤有輝さん「雲粒核数濃度の増加に対する台風強度の応答について」
雲粒核数濃度が違う条件下で数値シミュレーションを行った結果、雲粒核数濃度が増加すると、台風が弱くなる事を示しました。
・菱沼美咲さん「2019年台風第15号(Faxai)の強度と環境場の関係」
台風第15号の強度(風速)が大きい場合と小さい場合では、水蒸気が流れ込む地域が全く異なることをシミュレーションで示しました。
・阿部未来さん「台風制御の実証実験は可能なのか?ーELSI観点からー」
台風制御が社会実装されるためには、研究開発(シミュレーション実験)と並行し、実証実験(実際に積乱雲や台風に介入)を行う可能性を検討する必要がある。
【インディーズチーム】〜吉田研究室5名
・庄山翼さん「関東地方周辺の平野部と山岳部における極端降雨に対する地球温暖化の影響の違い」
温暖化による山岳域での降雨の影響について検証するため、降水シミュレーション実験を行った結果、静岡県沿岸部での地形性降雨により、内陸部(中部山地)の降雨が少なくなる事を示した。
・柴田基希さん「2019年台風Faxaiの初期渦形成過程についてのシミュレーション研究」
台風が渦を形成するために必要な初期渦の発生メカニズムを説明する「トップダウン仮説」と「ボトムアップ仮説」について紹介。現在はボトムアップ仮説の方が有力であるとの事でした。
・吉田幸太郎さん「2021年7月東海・関東地方の大雨事例における地形の影響について」
箱根山の地形効果に注目し、箱根山の高さを変えて降水のシミュレーション実験を行った結果、標高が現実の標高に近づく程、積算雨量が多くなる(観測値に近づく)事を示しました。
・段卓志さん「アラスカ内陸部の極端降水「アイスマゲドン」の解明」
普段は乾燥しているはずの12月のフェアバンクスでは、2021年12月に2日間で40mmの降水が観測された。この極端降水を”アイスマゲドン”と呼び、アラスカ南部の高気圧偏差により水蒸気が輸送されたことで起きたことを示した。
・大橋明日香さん「地形性β効果を加えた回転水槽実験」
地形性β効果を検証するために、水槽の底の形が異なる回転水槽を用いて、底の形によりジェットがどの様な振舞い(蛇行または乱流)をするのか検証し、各条件での結果をご紹介されました。
会員からの質問にもテキパキと答え、若い研究者をますます応援したくなりました。
4.予報士会会員発表 中田 浩史 会員
元関西人が見た関東大震災(神奈川震災)100年イベント
関西では関東大震災の詳細はあまり知られておらず、震源地が神奈川だったことも知らなかった。そこで、横浜地方気象台と横浜シティガイド協会のコラボイベントや神奈川県博物館協会の「神奈川震災100年プロジェクト」イベントで神奈川県立歴史博物館や、みなと博物館、開港資料館などをめぐり、あらためて関東大震災について学ぶことができた。
最後に、参加者全員で記念撮影をし、終了いたしました。その後の懇親会には学生のみなさんにも参加していただき、会員との交流を深めることができました。
今回はTRCの奥村様をはじめ横浜国立大学側のみなさんにリモート接続環境とそのセッティングををお願いいたしました。心より感謝の意を表します。
対面参加者:51名、オンライン参加者:37名、参加者計88名
トップページへ戻る