形式:対面とオンラインの併用(ハイブリッド)形式
1.招待講演 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境研究部門
気候変動適応策研究領域 気象・作物モデルグループ グループ長 丸山 篤志 様
農業の気候変動適応に向けた情報サービスについて
農業生産者の栽培管理に関する意思決定を支援する 、「栽培管理支援システム」について伺いました。これは気象データと作物の各種モデルを利用して、栽培管理に役立つ情報を作成・配信するシステムです。このシステムにより、農業生産者は作物の発育や収穫適期の予測、高温障害や冷害・病害発生の予報などを活用することができます。生産者の負担が大きい水管理にも気象データを用いることができ、自動水管理システム等に活かされています。また、丸山様が開発された「三球温度計」について伺いました。大きさが異なる複数の球形センサが用いられており、放射の影響を除去できる温度計です。放射よけや強制通風がなくても高精度に気温を計れるので、電気が通っていない農地でも小さな太陽パネルにて観測することができます。このため5mメッシュで観測でき、谷部分の冷えやすさなどをうまく表現できるため、凍霜害のリスク評価などに利用できるそうです。農業と気象データの結びつきが強いことを改めて感じる、非常に興味深い講演でした。
2.予報士会会員発表
(1)永井 佳実 会員
横浜地方気象台の一般公開について
新型コロナウィルス感染拡大防止のために自粛されていた一般公開が、令和5年9月1日から再開されたという報告を伺いました。この一般公開では、建築当時(昭和2年)の様子を残す気象台内や、「関東大震災から100年」の特別展示、防災専門図書館と連携した展示などを見学することができます。また、横浜シティガイド協会主催のガイドツアーや、各関係機関様の見学などの関連行事の開催報告がありました。2024年8月までは現在の展示内容が継続され、9月からは新しい内容に切り替えられる予定です。関連行事も継続され、ガイドツアーは2024年にも実施されるそうです。
(2)濱野 哲二 会員
アーカイブ シリーズ太平洋戦争と気象 台風部隊出撃せよ〜台湾沖航空戦〜
太平洋戦争において、台風襲来時でも行動可能な技量の「T攻撃部隊」が編成されました。この「T」は台風(typhoon)や魚雷(torpedo)を意味していたと伝えられています。台風を利用した荒天での攻撃が本旨で、天候不良に乗じて米軍の戦艦へ奇襲を仕掛ける策が考えられました。攻撃方法は、航空機から魚雷を投下して攻撃する、陸軍による「雷撃」です。専属の気象班が設けられ、中央気象台などからも気象のプロが参集。気象観測船や無人観測船、雷雲測定器も用意されたそうです。しかし出撃して間もなくスコールに包まれ、どしゃ降りの雨と弾幕が飛び交う視界不良の中、戦わずにほぼ全滅してしまうこともあったそうです。また魚雷を発射できても、スコールのため効果が不明だった模様。結果として、暴風雨下の出撃は効果が少なく、多大な戦力を一挙に損失するという現実を突きつけられたそうです。しかし強固な意志で猛訓練を行い出撃した姿は批判されるものではなく、気象を対象とした業務、研究などに関わる方々に向けて様々な教訓と示唆を訴えかけているのではないか、というご意見で締めくくられました。
(3)高木 育生 会員
札幌の季節の移ろい
札幌にて様々な季節に撮影されたお写真を、数多く共有してくださいました。11月の穏やかな風景から始まりましたが、2月は完全に雪景色に。路上の自転車が雪に埋もれている様子や、積雪で隠れないよう柱状になっている消火栓などのお写真が、特に会場の興味を引いていました。5月になるとライラックやチューリップが咲き、6月には池の氷が完全に溶けボートにも乗れるようです。8月は東京都の最高気温を越えた日があり、参加者の皆さんが驚かれていました。9月になると急激に気温が下がり、11月の紅葉を経て12月になると雪で全面が真っ白に。滑り止め材や、斜めに傾いている信号機、雪の結晶がデザインされた郵便ポストなど、北海道ならではのお写真が数多く共有されました。冒頭ではラジオゾンデの放球の様子が映し出され、会場の皆さんが興味深くご覧になっていました。
(4)生田 修 会員
大山(伯耆富士)と台風7号
前半は、鳥取県と大山の紹介を伺いました。見る方角で形状が全く異なる大山の姿に、感銘を受けた方が多かったようです。大山は信仰の山であり、住民を守ると考えられています。実際に、この山の付近では災害が少ないそうです。また、大山は冬季に降雪をもたらす一方で、フェーン現象による高温と大火を起こすことがあるそうです。後半は、鳥取県を襲った令和5年台風7号の勢力の変化や、天気図や雨量の分析結果について伺いました。土砂災害や河川の増水の様子、線状降水帯が発生した際の降水量分布図などが映し出され、被害の大きさや深刻さが伝わりました。しかし大山付近は降雨量が少なく、被害も少なかったそうで、発表者の生田様は「大山が災害から守ってくれた」と改めて感謝されたそうです。また、今後は日本海の気象条件にも注意が必要であると締めくくられました。鳥取砂丘が外来種の雑種により緑化しているお話なども伺い、非常に興味深かったです。
例会 対面参加者:33名、オンライン参加者:36名、参加者計69名
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