形式:対面とオンラインの併用(ハイブリッド)形式
1.招待講演 横浜地方気象台次長 井上 卓 様
気象変動に関する現状と将来予測
日本域の年平均気温は100年で+1.3℃、猛暑日・熱帯夜が増加し、冬日が減少。大雨の発生回数が増え、より強度の強い雨の頻度が増加し、無降水日も増加傾向にある。10年で桜の開花は1.1日早まり、カエデの紅葉は4.9日遅くなっており、生物も気候変化を感じ取っている。地球温暖化の原因とされる温室効果ガスは工業化が始まった直後に急増し、人の社会活動により増加し続けている。2つのシナリオによる将来予測は
年平均気温 RPC2.6:+1.4℃ RPC8.5:+4.5℃
1時間降水量50mm以上 RPC2.6: 1.6倍 RPC8.5: 2.3倍
緩和策をとらなかった場合の違いがはっきりと現われている。地球温暖化により増加した熱エネルギーの約91%は海洋に蓄積され、大気中に放出された人為起源の二酸化炭素の25%は海洋が吸収している。もし海洋がなければ、すでに住めない環境になっている。1970年代以降0〜700mの海水は10年で0.07℃上昇、海面上昇、酸素濃度低下、酸性化などの海洋の変化はゆっくり現われ、数百年〜数千年と長期化する。現在までの気候変化を概観し、温室効果ガスの現状と地球温暖化の将来予測について解説いただき、最後に地球温暖化の社会への影響の軽減・リスク回避のための緩和策・適応策の必要性と具体例が紹介された。
2.予報士会会員発表
(1)重枝 会員
丹沢大山落雷事故現場の今と当時の天気図
1992年11月1日に丹沢大山見晴台のあずま屋で発生した落雷事故がきっかけで、神奈川県が管理するあずま屋に避雷針が設置された。実際に現地に行って写した避雷針の写真の紹介と、事故当時の天気図からわかる気象概況が説明された。大山には雨や雷にまつわる神社や地名が多くあり、雷神社には大雷神(おおいかずちのかみ)、倶利伽羅堂には水神様の高●神(●は雨かんむりに龍:たかおかみのかみ)が祀られていることなどが紹介された。
(2)広野 会員
多摩川河川敷探検記(中野島附近)
多摩川河川敷は人の手がほとんど入っていない自然のままの場所で、砂地・石ころの河原・草地など様々な環境で多くの植物が観察できる。2019年の台風19号による川の増水で、植物はほとんど流され根元から刈り取られたような状態になったが、1年後には20~30%、2年後は60%、3年でほぼ100%回復し、さらに繁茂し続けている。柳は種を落として若木の群生を作り、オニグルミの果実は川で運ばれ、流れ着いたところで仲間を増やしている。また、オオキンケイギクやナヨクサフジなど多くの外来種が繁殖し、河川敷は外来種の楽園となっている。攪乱に適応し、繁殖する
たくましい植物たちの様子が写真と共に紹介された。
(3)吉田 会員
雪まみれの北海道巡り?函館から流氷まで?
今年の2月、函館から札幌、札幌を拠点に根室・稚内・網走・釧路・留萌・旭川へと縦横無尽に鉄道で巡った6日間の旅の様子を写真と動画で紹介された。15分間の動画では、雪を巻き上げながら駅を通過するシーン、鹿が線路を横断中の徐行シーン、吹雪の中を90q/hで走行するシーンなど車窓風景と共にエンジン音や廃棄ブレーキ音あり、キハ261系5000番台はまなす編成、キハ261系1000番台の韋駄天な走りの解説あり。北海道・鉄道の旅の醍醐味が紹介された。
(4)神頭 会員
北方四島ビザ無し交流で訪れた択捉島の紗那観測所
2019年、北方四島ビザ無し交流で訪れた択捉島・色丹島の自然や町並み、墓参風景、大規模な水産加工工場、北方四島で唯一の気象観測施設だった紗那測候所などがたくさんの写真と共に紹介された。1945年のヤルタ会談以降、ソ連の参戦、北方四島の住民が強制的に日本本土に引き上げるまでの歴史とあまり知られてない北方四島ビザ無し交流の概要について解説された。
(5)荒川 会員
気象教育の現状
日本の学校の気象教育では、小学校4・5年で天気の様子と変化、ひまわり画像について、中学2・3年で気象観測、天気の変化と気象、自然の恵みなどが取り上げられている。高校では理科が選択科目となるため、文系では地学基礎が35%、理系では地学はわずか1.2%しか選択されず、教員採用試験では、3割の学校で地学教員が採用されていない現状についての説明があった。地学教育が学校教育の中で丁寧に扱われなくなった現在、気象予報士はどのような役割を果たせるのか?と
問題提起された。
(6)梶原 会員
空気の重さ測定
ペットボトルなどの容器に一定量の空気を注入したときの重さの変動について、計算値と実測値を比較した実験が紹介された。一定量の空気を注入するために改造した炭酸キーパを利用して、炭酸用の丸形ペットボトル@Aと角形ペットボトルB、ビンCに100mlおよび200mlの空気を入れて、最小目盛0.01gのはかりで重さを測定し、実測値ー計算値の差を比較した。結果は、100ml/200mlとも ビンCの差はなく、ペットボトル@Aの差はいずれも-0.01g、ペットボトルBの差は-0.06g/-0.10gと@Aに比べ大きかった。以上の結果より、空気の注入による圧力で容器が膨張し、その分浮力が大きくなって実測値が計算値より小さくなったこと。Bの角形ペットボトルは@Aより強度が弱く変形量が大きかったため、実測値と計算値の差が大きくなったことが説明された。
例会 対面参加者:31名、オンライン参加者:28名、参加者計59名
トップページへ戻る