第80回(2015/10/3)神奈川支部例会&東京都市大学 横浜キャンパスツアー
東京都市大学 横浜キャンパス (横浜市都筑区)

東京都市大学 横浜キャンパスツアー 日時:10:00-11:30

緑に囲まれた横浜キャンパス内にある情報基盤センター、図書館、湿地ビオトープ、 気象観測装置、ハイブリッド芝生、3号館の吉崎研究室と屋上を環境学部の学生さんの案内で見学しました。
ビオトープではレッドデータブックにあるトチカガミやデンジソウの間をメダカが泳いでいました。
吉崎研究室では実験中の室内壁面緑化施設を見ました。
日差しが強く暑い日でしたが木陰に入るとひんやりとした心地よさを感じ緑の効果を体感できました。


参加者数

17名

13:00-17:00 神奈川支部例会
東京都市大学 横浜キャンパス (横浜市都筑区)2号館2F プレゼンテーションラボ


(1)平川支部長のご挨拶
(2)招待講演
東京都市大学 環境学部教授 吉崎 真司 先生「乾燥地における風食防止のための緑化技術」
乾燥地における土地劣化の現状と修復技術を解説頂きました。
・乾燥地にも地下水は豊富にあるが塩水化しているため植物の灌水には使えない。
・乾燥地の表層には乾砂層があり、これが地下水の蒸発を防いでいるが、樹木を植えることで逆に地下水の蒸発を速めてしまう。 つまり、砂漠緑化=植林ではない。
・乾燥地では雨が降ってもすぐ蒸発するため土壌が塩類化し、この砂が周辺に飛散することで農地をだめにしてしまう。 砂の移動を防ぐために土地に凹凸を作って風を弱める必要がある。
この砂防技術のひとつとして草方格がある。
・砂漠化の原因は過放牧・過伐採・過開墾であり、人為的要因が大きい。
・遊牧が中心であった時代には砂漠化は起きなかった。
という興味深いお話をして頂きました。

東京都市大学 環境学部准教授 リジャル・ホム・バハドウル 先生「世界各地の気候に適合した伝統的建築環境」
気候風土に適合した伝統的建築と環境改善について解説頂きました。
・伝統的建築は各地域で得られる自然の建材と地域独自の技術で作られた気候風土に適合した建築物をさし、 環境やエネルギー負荷が小さいため持続可能といった観点から注目されている。 例えば、日射の強いギリシャの白い建物、雪国の勾配の大きい合掌造りの屋根などが挙げられる。
・リジャル先生の故郷のネパールは高温多湿、温暖、寒冷の3つの気候に分類でき、 それぞれに合った建材を使い独自の形態を持つ住宅が形成されていた。 それらの伝統的住宅に温熱環境・空気環境の改善と省エネルギー化を図る取り組みがある。
というお話を頂きました。
育った環境と同じ温度を快適と感じるといった調査結果を聞き、人は環境に適合するように育っていくものなのかと感じました。

(3)話題提供

佐藤 会員「富士山における気象観測」
富士山の標高2,000m〜2,900mの場所で2014年9月から2015年5月に観測した気温、 湿度、気圧のデータと滞在施設・観測地周辺の風景写真などを紹介して頂きました。 気象観測装置のバッテリーの防寒対策が不十分で記録がすべて消えてしまったといったエピソードからも厳寒の富士山での越年観測は過酷なものと思われますが、 佐藤元さんの意気揚々と話されるご様子からは大変さを微塵も感じられませんでした。
「アサギマダラの飛行について」
アサギマダラ追跡ネットワークについてお話し頂きました。 アサギマダラはタテハチョウ科に分類され内側が白っぽく黒い筋のある羽を持つ大型のチョウ。 このアサギマダラを捕獲し羽の白い部分に個体番号・日時・場所をマジックで書き込んで放し、 次にどこかで捕獲されると日時と場所が連絡され飛行日数と飛行距離がわかるというシステムだそうです。 アサギマダラは気流をうまくとらえて台湾と尾瀬の間を2,000kmも移動することがあるという飛行能力に驚きました。

濱野 会員「中世東西大仏合戦〜鎌倉武士・京貴族を凌駕す」
東大寺大仏と鎌倉大仏を対比させ、鎌倉の経済的発展、文化的躍進を解説頂きました。 源平合戦の最中、東大寺の大仏は焼き討ちに遭って焼失、時の権力者や貴族に多大なショックを与えた。 直ちに大仏の再建事業が着手され、源頼朝も莫大な物資、 資金の援助をするとともに鎌倉にも大仏を欲するようになる。 やがて、半世紀後鎌倉に大仏が誕生、当初は木造であったという。 同じ時期、京都にも木造の大仏が作られ、 その後京都と鎌倉の間で大仏建立競争のような形になっていく。 両大仏の建立、造営の経緯を振り返り大仏に秘められた京貴族と鎌倉武士の対抗の歴史を探り、 かつ鎌倉大仏が500年以上もの間、風雪や気象災害に耐え抜いてきた理由を検証頂きました。 滔々と語られる濱野さんの歴史観に惹きこまれました。

藤井 会員「アメリカの皆既日食に行きませんか?」
2017年8月21日夕方、皆既帯がアメリカを横断します。 皆既日食が最大になるポイントはケンタッキ州ホプキンスビル近郊、 太陽が隠れる皆既時間が最長になるのはイリノイ州マリオン近郊であることが紹介され、 『皆既日食プロジェクト〜一緒にいってみませんか?』のお誘いがありました。 また、8月2日の日光合宿の帰り道で遭遇した雷と雹の映像を紹介頂きました。

ひとこと自己紹介タイム
池辺 会員「この夏の北極の氷の減り方」
北極海の海氷の年最小面積の変動とその要因について解説頂きました。 北極海の海氷面積の観測によると観測史上最小になったのが2012年、2番目が2007年、3番目が2011年でした。 今年9月には過去2番目の2007年とほぼ同じになると予測されながら、 そこまで減少しなかったというデータを紹介頂きました。 なぜ北極の氷が重要なのか、極の氷が解ける要因は何か、 北極海の海氷減少のフィードバック効果等を説明頂き、 海氷の年最小面積が徐々に減少し続けるのではなく減少したり回復したりしている現状とその原因について解説して頂きました。

日本気象予報士会平松副会長のご挨拶
諸連絡、集合記念写真撮影

懇親会

「和風れすとらん天狗」港北中川店
松田副支部長の音頭で乾杯の後、和やかな雰囲気のなか、親睦を深めました。 約2時間半の宴の最後は、ご講演頂きました吉崎先生よりひとこと頂き、一本締めで閉会しました。

参加者数

例会48名(懇親会32名)

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