第79回(2015/7/5)神奈川支部例会&横浜地方気象台見学会
かながわ労働プラザ 第3会議室&横浜地方気象台

10:00-11:30 横浜地方気象台見学会

2班に分かれて見学。当日朝に大雨警報(土砂災害)が出されたことで、 現業室の見学は10分程度に短縮されましたが、 緊迫感のある予報の現場を垣間見ることができました。
他に、建物から切り離されて設置された地震計や、 見晴らしのよい視程の観測室(富士山までは約80km)、露場、桜の標本木なども見学しました。
標本木は、昨年までは元町公園のものでしたが、 今年から気象台構内の木に変わったそうです。
建物自体も、様々なところにアールデコ調の装飾が施された歴史的建築物ということで、 市の文化財にも指定され、保存・活用されているとのことでした。
ちなみに増築された第二庁舎は安藤忠雄氏設計。

参加者数

29名

13:00-17:00 神奈川支部例会

(1)初参加者自己紹介

(2)招待講演

海上保安庁 鈴木 充広 氏「暦の話」
海上保安庁の「暦算」という業務のことや、世界各地の暦、 気象と関係の深い二十四節気や雑節についてわかりやすく解説されました。
概要
海上保安庁では、安全な航海のために「暦算」という業務で天測暦を作成している。
世界各地に数百もの暦があり、年月日という単位(周期)はほぼ一定であるが、起点は異なっており、 例えば、イスラム暦では、一日の初めは日没となっている。
月の運行を基準にした太陰暦は、徐々に季節とのずれが生じる。
イスラム暦に基づく「ラマダン」は、今年は夏だが、16年ほどすれば冬になる。 そのずれを補うために二十四節気(二至二分)が考案された。
重要な節目として、二至(夏至、冬至)二分(春分、秋分)四立(立春、立夏、立秋、立冬)があり、これらを八節と呼ぶ。 また、約3年に1度、閏月を加えて1年を13ヶ月とした。
二十四節気は中国の大陸性の気候とはよく一致しているが、日本の気候とはあまり合っていない。
そこで、日本の季節の移り変わりに合わせて、独自に雑節(八十八夜、半夏生など)が作られた。
明治改暦では、明治5年12月2日の翌日が明治6年1月1日になり、多くの混乱を生じたことをユーモアを交えて解説された。

(3)話題提供:前半

三浦 会員「松ぼっくりは湿度計として使えるか?」
松ぼっくりの鱗片は、晴れているときには開き、雨が降ると閉じる。この性質を利用して湿度計を作れないか検討した。
松ぼっくり全体をそのまま使って、1枚の鱗辺に竹ひごを付けたもの(全体型1段)と、
軸から鱗片を取り外し、3枚の鱗片を多段に接着してその先端に竹ひごを付けたもの(鱗片型3段)について調べた。
今回は、全体型は大型種、多段型は小型種を用い、校正用湿度計との比較を行った。
結果として、多段型は感度高・バラつき小で、家庭用のアナログ湿度計と比べて遜色なく、
松ぼっくりを利用して家庭用湿度計が作れることがわかった。
今後は、子どもたちの活動に役立てられるよう、誰でも簡単に作れるようなマニュアルを作成したい。

田家 会員「ヨルダン川西岸の気候」
ヨルダン川西岸地区(イスラエル)の死海を訪れた際の写真を用いながら、観光ポイントや地理的・気候的特徴についての発表。
死海湖面は海抜-418m。塩分濃度は23-27%(飽和塩分濃度は27%、海水は約3%)。5分程度しか入っていられない。
年間降水量は50mm以下、年間330日以上が晴れ、 湖水は行き場がなく蒸発するだけであり、湖面水位が毎年低下している。
また、死海では日焼けしにくいといわれている。これは、UV-B波が減衰されるためであり、 死海付近のUV-B波の線量は、全休平均より約10%少ない。
理由としては、湖水の蒸発により塩分由来のエーロゾルが豊富であること、 湖面水位低下で対流圏が厚いことなどが挙げられる。

(4)招待講演

横浜地方気象台長 高尾 俊則 氏「オゾン層の科学--ウィーン条約30周年に寄せて--」
オゾン層の成り立ちや、オゾン層破壊のメカニズム、 ブリューワ・ドブソン対流、極成層圏雲などについて、 二度の南極越冬観測のご経験も交えつつ、幅広く解説されました。
概要
オゾン消失サイクルとして、「HOxサイクル」「NOxサイクル」「ClOxサイクル」があり、 ClOxサイクル(フロンガスによるオゾン層の破壊)を発見した モリーナ・ローランド・クルッツェンの3名は1995年にノーベル化学賞を受賞した。
南極オゾンホールは1979年に発見され、オゾン層保護のためのウィーン条約は1985年に採択、1988年に発効。
二度目の南極観測時には、太陽高度が低いにもかかわらず、夏の沖縄に匹敵するくらいの強い紫外線を観測した。
理由としては、オゾンホールがあること、雪氷面でアルベドが高い(反射された紫外線量が多い)ことが挙げられる。
最後に、オゾン層破壊を防ぐために私たちにできることとして、 「フロン回収に協力しよう・ノンフロンを選ぼう・オゾン層や紫外線について知ろう」と結んだ。

(5)話題提供:後半

水田 会員「こんな最高気温はいかが?」
ここ数年の最高気温は、1位江川崎(高知)2位熊谷(埼玉)3位多治見(岐阜)であるが、 2007年までは長い間山形であった。最高気温が北日本で出ていることが面白い、 と考え、最高気温を材料に、様々な角度から検討してみた。
例えば、2014年6月3-4日は、北海道で異常高温となった。
3日は、日最高気温のトップ10が十勝地方または網走・北見・紋別地方、その日は日最低気温も10 位以内に北海道が8地点もランクイン。
4日は、日最高気温のトップ10はすべて上川地方、日最低気温のトップ10もすべて北海道であった。
更に、6月3日の最高気温について平年との差を求めてみると、 北海道網北紋地方の雄武が平年差+20.2℃でトップ。
今年になっての最高気温を見ると、4月27日に十勝地方の大津が全国2位の31.9℃を記録、 しかも平年差+21.4℃。
更に北海道小清水は、4月28日に32.8℃・平年差+21.7℃を、網走は4月21日に31.9℃・平年差21.8℃を記録。
平年差21.8℃を超える事例を見つけたら教えてください、と締めくくった。

濱野 会員「関東戦国大名軍事行動の季節性」
上杉氏・武田氏・北条氏の三つ巴の戦いは、 赤城山を中心とする上野国・武蔵国の国境付近で繰り広げられた。
大規模な軍事行動には「利根川の渡河」が重要なポイントとなる。
古文書から、渡河の方法、季節性、舟橋管理徹底の必要性などがわかり、 利根川渡河の重要性が読み取れる。
利根川の渡河方法としては、瀬を渡る、船で渡る、橋を渡る、舟橋(舟を並べてつなぎ、板を渡して仮橋とするもの)がある。
渡河を阻む気象要素として、旧暦3-4月の雪解け水、7-10月の梅雨や台風による増水がある。
これらは逆に、防御としても利用していた。舟橋の架橋は、主として利根川が渇水期となる冬季に行われている。
古文書を読み解くことで、関東戦国大名の軍事行動は季節に左右されやすく、意外に簡単ではなかったことがわかる。

写真撮影

懇親会

横浜中華街 鳳林
ドタ参やファミリー参加もあり、近況報告や各支部・活動団体からの発表と、あっという間の2時間。 美味しい中華料理を囲んで大いに盛り上がりました。


参加者数

例会52名(懇親会35名+子供1名)

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