第61回(2011/01/29)神奈川支部例会 慶應大学 日吉キャンパス 来往舎1階シンポジウムスペース

第一部(一般公開)

招待講演 神奈川大学 松本安生教授「“地球温暖化”はどう伝わっているか」
横浜市金沢区にて神奈川大学と横浜市が合同で実施した『地球温暖化に関するアンケート』の結果を基に、 現象の理解度と効果的な啓発活動について分析をされました。
結果からは、温暖化に対する危機感は強いものの、身近なところは楽観的で因果関係についての認識もあやふやであること、 情報源はマスコミ中心だが、信頼するのは公的機関や専門家、といった傾向が読み取れました。
ここで二つのアプローチをされています。
一つは認識・意欲・導入態度の関連の強さから立てられた仮説に基づくもので、 『認識はしているが意欲はない人へのアプローチが重要』との結論に至っています。
もう一つは客観的データから詰めていく探索的セグメンテーションによるもので、 意識と行動の類似性から分類された4つのセグメントの中から、 関心は強いものの行動に至っていない「エコ意識先行型」の人への普及活動が重要との結論を導かれました。
この分析結果と、何を情報源としているかについての分析結果から、 学校教育を通じた家庭への普及啓発が効果的であるということで、 気象キャスターネットワークの協力で出前事業を実施、その後の夏休みを利用した実践活動「こども省エネ大作戦」を経て、 意識と行動がどの程度変化したかを分析、一定の効果が得られていることを示されました。
温暖化への関心は予想以上に高かった一方で、オゾン層破壊との関連を強く意識しているなど、イメージ先行なところもあるようで、 今回の分析と普及啓発活動のような取り組みを地道に続けていくことが重要であるということを実感しました。

第二部(例会)

横浜地方気象台 永井佳実予報官「1月11~12日の降水について」
初雪になりそうでならなかった、1月11~12日の降水について
実際に予報の現場で使用されている解析図等を基に説明していただきました。
予想通り降水はあったものの雪にならなかった要因として、湿球温度が下がりきらなかったことを挙げられていました。
また、南岸低気圧の通過によって雪になった昨年3月19日と、 逆転層が顕著で凍雨が観測された同4月17日との比較もされました。
雪になるかの判断は850hPaではなく925hPaの気温に着目すること、地上の実況監視や湿球温度の観測が重要であるとのご指摘が興味深かったです。


高木 会員「パソ研ツールで見る、『正月前後の西日本の雪と、1月の天気の様子』」
記録的な大雪になった西日本を中心に、正月前後の気象について
「晴れてほしーの」をはじめとしたパソコン研究会のツールを駆使し、動画に編集されていました。
12月中にもあった降水が、クリスマス頃からの気温の急降下によって雪になり、年末の大雪につながっていく様子や、 その後も冬型が継続し雪が解けていない状況を非常に分かりやすく見ることができました。
池辺 会員「南アフリカの異常気象と生物多様性」
昨年サッカーW杯も開催された南アフリカの首都ケープタウン。
その周辺に世界6大植物区の一つに数えられるケープ植物区があるとのこと。
ヨーロッパの一国に生息する種の総数をはるかに上回る固有種が、北海道ほどの面積に生息するという奇跡的なこの地も、 近年海流の変化などの環境変化によって危機に瀕しているそうです。
地勢的に珍しいわけでもないこの地になぜこんな多様な植物が生息していたのかも含め、興味深い内容でした。
梶原 会員「エクセルで作った回転盤シミュレータ」
「台風がやってきた」展でも好評だった、回転盤を用いたコリオリ力を可視化する展示。
それをなんとエクセル上で再現されてしまいました。
理屈としては分かっていてもなかなか実感しにくいコリオリ力ですが、 動きとして実際に見ることで、直感的に理解することができました。
また、角度をずらしたら、位置をずらしたらどうなるか、という疑問にも応えてくれるスグレモノでした。
なおファイルは神奈川支部ダウンロードサイトから入手することができます。
山本由佳さん「サニーエンジェルス近況報告」
関東以外での活動の展開、積極的なメディアへの露出ととどまるところを知らないサニーエンジェルスの近況を報告していただきました。
ベースとなるサイエンスママカフェの開催や展開だけでなく、イベントへの参加や外部の賞への応募など、 これまでと違った活動も進められていることが分かりました。
そして、サプライズとして、第7回横浜YMCA「夢すくすく賞」奨励賞の受賞が決まったことが発表されました。
全国展開やグランマカフェやイクメンカフェなど新たな構想も楽しみです。


山本秀生さん「第5回航空気象シンポジウム報告」
羽田で開催されたシンポジウムの内容を発表していただきました。
マイクロバーストやウインドシアといった飛行に重大な影響を与える気象現象をいち早く捉え、 知らせるためのドップラーレーダーやドップラーライダー、アドバイザリシステムの開発と整備状況や、 管制官やパイロットの方がどのように対策をされているかと言った話題を、現役パイロットとしての視点も交えお話いただきました。
また、実際にマイクロバーストが原因と思われる事故の様子、事故が起こる要因のモデル、 新燃岳噴火中でもなぜ鹿児島空港が運用できるのか等、時間の都合で詳しくお話いただくことは出来ませんでしたが、 もっと詳しく伺いたい内容が盛りだくさんでした。
長嶋賢一さん「マラソンと気象」
11月に行われたつくばマラソンについてのお話を発表していただきました。
つくばマラソンはコースが比較的平坦でタイムが出やすい大会とのこと。
前回大会では実に54%のランナーが、4時間以内で走破する「サブ4」を達成されていたそうですが今回は46%にまで下がってしまったそうです。
前回と何が違っていたのか、当日の気象データを基に解説していただきました。

懇親会

例会終了後には日吉駅近くのお店「くりの木」にて懇親会が開催され、神奈川支部らしく盛況でした。
二次会では、いつものお店「寅さん」に場所を移し、サッカーの中継時間を気にしながらも楽しいひと時が過ごせました。

参加者数

例会54名(懇親会34名、二次会13名)

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