第7回中国四国ブロック合同例会(第103回例会) 担当:四国支部
(四国支部からの報告を一部修正して転載しています)
日時: 2017年9月23日(土) 13時30分〜17時
場所: 高松市サンポートホール62会議室
参加人数: 予報士24名+松村伸二先生
内容:
1.講演会
「農業現場において求められる気象情報の多様化」 … 松村伸二先生 (香川大学農学部)
気象情報を利用した農業利用法について、北海道での小麦栽培の実例を中心にご紹介頂いた。
播種、追肥、収穫などの作業をいつ行うことが最適かを、気温や降水の平年値や実況値を使用して予測する手法がある。
また、小麦には赤カビ害や湿害など、収穫量に大きく影響する害があるが、これらに対しても気象情報を元に最適な対策を実施し、被害を軽減することができる。
より精度の高い利用の為には長期予報の精度向上が求められる。
2.話題提供
(1)農作業と天気予報の深〜い関係 … 廣幡会員 (岡山支部)
岡山県奈義町周辺の農家にとって局地風の広戸風の特徴を知ることは非常に重要である。
これまでの研究により、地上での最大瞬間風速は、MSMにより求めた奈義町の925hPa風速と850hPaの鳥取の風速との重相関に対して一致率が良い。
また、広戸風の対策を事前に行いやすくするために、発生確度を5段階で評価し、段階的に対策することを提案している。
局地風である広戸風の予想はメディアであまり報じられず、このような段階的な対策は分かりやすく有用であると思われる。
(2)台風5号について … 大崎会員 (四国支部)
今年の台風5号は観測史上2位の長寿台風になったが、原因としては太平洋高気圧が北に張り出していた為北上を阻まれ、日本に接近してからも、消滅まで偏西風の流れに乗らなかったことにあることが考察された。
MSMの予想では直前まで四国上陸コースだったが、実況は四国の南海上を通りGSMの予想に近いコースを通っている。
また、台風の進路予測の手法として24時間気圧偏差を紹介した。
(3)九州北部豪雨(2017)と高知豪雨(1998)との類似点 … 松村会員 (山陰支部)
両事例の類似点として、
・アメダスでは豪雨周辺との温度傾度が2.5〜3℃と大きく局地前線が発生していた可能性があり、豪雨発生メカニズムの類似が考えられる。
・前日には台風が通過しており、サブH縁辺を暖湿気の入る場が続いていた。
・500hPaトラフに対応した前線の南下により、その南にあった正渦度極大域が流入したタイミングで豪雨が発生している。
・前線の北側(寒気側)で豪雨が発生している。
・1時間雨量の最大値が129.5mmという値も両事例で同じであった。
これら類似点について様々な資料を用いて説明した。
(4)福山の今夏の天気概況 … 杉原会員 (広島県支部)
福山市の今夏の気象についてトピックスを紹介した。
6月は平年より気温が低かったが、7,8月は平年より高く猛暑となった。
7月5日に島根県西部に大雨特別警報が発表された日には福山まで線状降水帯の先端が達し、今夏一番の大雨となって、浸水や通行止めなどの被害が発生した。
このとき島根県邑南町では、住民が気象レーダーをチェックし、独自の判断で町の避難勧告より早く避難所を開設し、避難準備を行ったことを新聞記事で知った。自主的な防災行動が非常に大事であると感じた。
(5)天体写真画像処理手法を用いたひまわり8号画像データ利用について … 志摩会員 (四国支部)
ひまわり8号のある期間の画像データに対して、画像処理ソフトを使用し期間中のデータを演算することにより、どのような雲パターンが見えてくるか試行した。
データの単純加算や、諧調を0か1の2値に分けた加算などを行い、それぞれについて、ある時期に特徴的な雲の分布傾向が現れた。今後は各演算についての詳しい解析が期待される。