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第2回波浪予想勉強会
 

1.日時:平成14年3月24日(日)

  2.場所:気象大学校(千葉県柏市)
  3.参加:23人
  4.勉強会概要
(1) 波浪解析(波浪図作成)解説(第1回の復習)
(2) 実習:2002年1月27日09時(日本時間)の外洋波浪図の解析
(3) 実習結果の講評と解説
  5.配布資料の内容
(1)解説資料
  • 風速・吹走距離・吹続時間から風浪を計算する図→SMB法による
  • 台風の示度と最大波高→台風の中心示度と最大波高の関係を統計調査した結果
  • 波浪観測施設配置図→国土交通省港湾局と気象庁が設置している沿岸波浪計
  • 波高推定表(Cos2乗則の場合)→気象庁が設置している沿岸波高計が観測した波高値から沖合いの波高値を推定するための換算係数
  • 合成波高計算表→合成波高=平方根{(風浪波高)2乗+(うねり波高)2乗}を求めるための表
  • 外洋波浪図の解説資料→磯崎一郎・鈴木靖著『波浪の解析と予報』東海大学出版1999,p264
(2)予報用資料(数値予報プロダクト他)
  • 波浪観測データ時系列表  4枚→期間:250000UTC JAN 2002 〜 290000UTC JAN 2002
  • 外洋波浪実況図 6枚→期間:260000UTC JAN 2002 〜 281200UTC JAN 2002
  • 外洋波浪予想図 6枚→期間:251200UTC JAN 2002 〜 280000UTC JAN 2002をイニシャルとする12時間予想
  • 外洋波浪実況図と同じ範囲・縮尺の地上天気図 6枚→期間:外洋波浪実況図と同じ
  • 極軌道衛星TOPEX観測データ  6枚→期間:外洋波浪実況図と同じ
  • 外洋波浪実況図作成用プロット図  6枚→期間:外洋波浪実況図と同じ。ただし、280000UTC JAN 2002については演習用としてトレーシングペーパーに印刷

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  6.勉強会詳細
6.1 波浪解析(波浪図作成)解説(第1回の復習)
・波浪解析(波浪図作成)の手引き〜について簡単に復習
詳細は、第1回報告を参照して下さい。
6.2 参加者波浪予想作業(グループ別・参加者各自)
   演習で波浪解析した2002年1月27日9時(日本時間)の状況は概略つぎのようになります。(以下、日時は日本時間とする。)
    26日9時に東シナ海にあった1008hPaの低気圧が急速に発達しながら日本の南岸沿いに進み、28日9時には三陸沖に達して972hPaまで発達。日本付近では西高東低の冬型気圧配置が強まる。一方、この低気圧の東には1028hPaの移動性高気圧、さらにその東には低気圧が発達しながらアリューシャン列島に向かって北上。
(1)波浪計と衛星観測データのマーキング
 波浪観測時系列表と極軌道衛星TOPEX観測データにある波高データを読み取りやすいように波高区分別にざっとマーキングする。
   波高区分マーキング(着色)については第1回報告を参照して下さい。
(2)等波高線の解析
 外洋波浪実況図と同じ範囲・縮尺の地上天気図の上に、演習用の外洋波浪実況図作成用プロット図(トレーシングペーパー印刷)を重ねて等波高線を解析する。
   その際、適宜マーキングされた極軌道衛星TOPEX観測データや外洋波浪予想図(271200UTC JAN 2002イニシャル12時間予想)重ねて、等波高線解析の参考にする。
   もちろん、12時間前、24時間前の外洋波浪実況図や波浪観測時系列表にある沿岸波浪計や海洋ブイの波高データから波高変化について押えておく。
6.3 作成した波浪予報図の解説(講師)
 作成した予想図を持ち寄って並べ、比較検討した。その中から代表作をプロジェクターで写し出し、講師に解析を交えて寸評をいただいた。
(1)三陸沖の発達した低気圧の周辺
  • この低気圧に伴う高波高域のピーク値(閉じた等波高線の最大値)を何mにしたか?。
     →8m、10m、12mと意見が分かれた。
  • この高波高域のところにTOPEX観測値がある。
     →01:00〜01:14(UTC)、最大値11.7m
  • 解析時刻(00UTC)と約1時間の差があるが、この間に波高が大きく変化することがないので、このTOPEX観測値を採用すると波高10m以上の高波高域が解析できる。
  • この低気圧の中心の南東にあった船舶(39N,150E)の報告(南南西の風35ノット;風浪  3.5m、7秒;うねり3.5m、7秒)から合成波高を計算すると約5mしかならず、高波高域のピーク値は8m以上であろうと解析した。
  • この低気圧の暖域内の船舶(35N,157E)の報告(南の風45ノット;風浪  5.5m、12秒;うねり6.0m、14秒)から合成波高を計算すると約8mとなるため、波高8mの等波高線を広く大きく解析しなければならないのか悩んだ。
  • 気象庁の沿岸波浪計(江ノ島・宮城県)の波高:28日00UTC  4.8m、13秒)
    これに波高推定表(COS2乗則の場合)を適用すると、離岸風により  4.8m×3.0=14.4m  と過大になってしまうが、やはり高波高域は広いのだろうか・・・・・?。
  • そこで、この高波高域のピーク値についてSMB法により検証:
a)27日12UTCにおいて三陸沖では8m以上(外洋波浪実況図より)。その周辺にいた船舶の観測によれば40〜45ノットの強風が吹いており、低気圧の中心付近で50〜60ノットの暴風と推定できる。
 →この暴風が吹いている海域が、28日00UTCにおいて高波高域になっている。
b)27日12UTCから28日00UTCにかけて低気圧はあまり動いておらず気圧場に大きな変化がないので、上記の海域で50〜60ノットの暴風が継続していた考えられる。
c)風速を55ノットと仮定して波高が12mに達するまでに要する吹続時間をSMB法による風浪予知図から読み取ると25時間。
d)また、波高が8mに達するまでの吹続時間は10時間。
e)したがって、波高が8mから12mに達するまでの吹続時間は、25−10=15時間。
f)逆に、波高8m以上域において風速55ノットの暴風が12時間吹き続けたとして、吹続時間10+12=22時間でSMB法による風浪予知図から11.3m。
ざっと見積もっただけでも高波高域のピーク値が10m以上であることは確実であり、それを12mと解析しても妥当であろう。その辺のところは解析者によって結果が異なるところ。
・この低気圧の高波高域は、閉塞前線を挟んで低気圧の中心側と進行
    方向側にあり、前者は前述のとおり波高12m以上で、後者は8m
    以上の領域を解析しておく。

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(2)日付変更線の東を北上する低気圧
・この低気圧の中心付近にTOPEXデータがあり、そのピーク値は5mなので、低気圧と寒冷前線の西側に波高4m以上の領域を解析る。また、高波高域のピーク値は5mで、低気圧中心の南に解析。
・ アラスカ半島の南にある海洋ブイ(55N,155W)の波高データは3m前後で推移しているので、この海洋ブイを通り、この低気圧の東側にある高気圧を囲むように波高3mの等波高線を解析する。また、この高気圧と低気圧の中心を結ぶ軸線上、寒冷前線の東側にも波高4mの領域を小さく解析する。これは低気圧の発達により等圧線が込み合って風が強まることによる波高上昇。
(3)亜熱帯高気圧域
・亜熱帯高気圧の海域は常に北東風が吹いていて発達しきった状態であるため波高は2m以上。しかし、この海域に何らかの擾乱が存在したり、強風が吹いたりすれば波高はすぐに高くなる。

・TOPEXデータや船舶データから波高3m以上の領域が解析でき、演習用プロット図の右上には波高4m以上の領域も解析できる。

(4)日本海
・北朝鮮の東海域に波高2m以下の領域を解析し、それ以外の日本海は波高2m以上。
・気象庁の沿岸波浪計(温海・山形県、経ケ岬・京都府)の波高(28日00UTC;温海    3.8m、8秒;経ケ岬  2.6m、9秒)から若狭湾から北へ日本海沿岸では波高3m以上の領域として解析され、三陸沖の低気圧と大陸高気圧の中心を結んだ軸線上にあたる秋田沖に高波高域のピーク4m。
(5)台湾海峡

・台湾海峡では地形的に風が強まるため波高が大きくなることが予想できる。船舶データを参考にして、シャンハイ沖から台湾を囲み、台湾の南西海域にかけて波高3mの等波高線を解析する。ただし、この領域内に波高4mの等波高線を解析するか否かは解析者により見解が異なるだろう。

(6)南シナ海
・27日12UTCの外洋波浪実況図では、南シナ海の真ん中(ベトナム沖)に波高2m以上の領域が解析され、それ以外は2m以下。28日00UTCに同海域にいた船舶データから南シナ海の真ん中には2mの等波高線が解析できる。ただ、その波高ピーク値を3mにするか否かは解析者により解析結果が異なるだろう。
(7)南西諸島
・九州の南から沖縄本島にかけては、三陸沖へ抜けた低気圧による高波高が減衰し、大陸からの高気圧の張り出しにより東シナ海北部で再び波高が高くなるまでの間、一時的に波高が2m以下になったと見て、奄美群島などを囲むように波高2m以下の領域を解析したい。
7.感想
・感想A
 個人的なことですが、外洋波浪図を眺めたことはあっても実際に解析した経験がありませんので、今回実際に解析してみて、その解析のポイントを丁寧に易しく解説して頂いたことで、波浪解析図をより深く吟味する切っ掛けになりました。
 一般的な天気図でもそうですが、実際に自分の手で解析してみることで、単なる知識にしかなかったことが、より深く理解できるものです。
 アウトプットされた予報資料を眺めるだけのことが多い、またはそれしか出来ない環境ではあると思いますが、例えば気象予報士会東京支部や栃木県気象予報士会で開催している天気図検討会に参加して、実際に観測データがプロットされた地上・高層天気図の解析作業を体験するのもお勧めかなと思います。
・感想B
 今回の勉強会の会場は千葉県柏市にある気象大学校。構内に植えられたソメイヨシノは例によって満開の見頃を迎えており、講師から講義中に「休み時間に花見でも・・・・。」とのお話も出ましたが、参加者の大部分が外洋波浪図など天気図に比べ目にする機会がほとんど無いわけですから、それを実際に解析するとなっては、花見どころではなく、勉強会最後の質疑応答は、今回大阪から参加された方が帰りの新幹線の時間を気にされ、予定の時間をオーバーしていることに気付くほど集中していました。
 そうそう、今回は21名の方が参加されましたが、そのうち2名(いずれも女性)は大阪府からの参加でした。遠路はるばる参加して頂きまして、誠にありがとうございました。
 
注)本報告は、勉強会出席者の参加報告を著者の了解を得て転載させて頂きました。
         

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