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フォルタン型水銀気圧計
Fortin Barometer (Mercury Barometer)
Originated: 2007-1/26 Last Updated: 2007-1/26, 1/31, 2/01, 2/10, 8/13
■フォルタン型水銀気圧計の写真です。
全体図(全長約100CM)
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気圧計上部の気圧読み取り部
(主尺、副尺)
気圧計下部の水銀の液面と
象牙接触部分
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このフォルタン型水銀気圧計を使うと、気圧を精密に測定できます。
読み取った値には、次の3種の「補正」を施し、「現地気圧」を求めます。
@器差補正(気象庁の検定を受ければ、検定証書に「補正値」が記載されます。器差には、
メニスカスが含まれています。(メニスカスとは、ギリシャ語meniscus「新月」
の意。個体壁面(例えば、ガラス管内壁)に接する液体(例えば、水銀)の動き
が個体壁面により抵抗を受け、液体表面形状がイビツになり、液面の山或いは谷の
高さが正常な位置から隔たることと成る現象のことです。この現象は、水銀柱が
太いほど影響は少なくなります。メニスカスを解消するには、気圧計の真鍮部分を
指で軽くハジイテやると、抵抗が開放されるようです。なお、気象庁では水銀柱
が10mm以上の太さのものを採用しているようです。)
A温度補正(気圧計に付属している温度計で温度を求め、計算式や常用表から補正値を求める。
水銀気圧計に対して温度条件は非常に厳しいものがあります。付着温度計と
水銀気圧計の温度が同じになるように設置場所、空気の流通、日当たりの有無
などに配慮が必要です。)
B重力補正(@、Aを行なってからBを行う、計算式や常用表から補正値を求める。)
以上の補正によって、現地気圧が求められます。更に、海面更正を行ないます。
C海面更正にはいくつかの方法があります。
■簡易的には、
[Δp=ρgΔz]の式により算出します。こちらを参考にしてください。
ρ(大気の密度)は気温及び気圧によって変わります。理科年表に値が掲載されています。
g(重力の加速度)も理科年表に掲載されています。
Δz(観測地点における、気圧計が設置されている海抜高度)
■精密に行なうには、
P0=P・Exp(gz/RTvm)の数式を使用します。
P0は海面更正後の気圧、Pは水銀気圧計にて求めた現地気圧、Tはそのときの温度。
gは観測点での重力の加速度、Zは観測点の海抜高度、Rは気体定数、Tvmは仮温度、
■筆者が行なっている自宅での現地気圧及び海面更正後の気圧の算出は、
次の2表で行なっています。→計算手順 海面更正線図
中古の気圧計を入手した場合は、正確な測定は期待できません。メーカーに持ち込んで、
修理、部品交換等行なってから、検定に出します。気圧計の製造年月が比較的新しくても
検定有効期間(5年)を過ぎたものは、車の車検と同じで、車が公道を走れないと同じく、
気圧を測定しても公表できません。
修理費用は、程度によりますが、数万円から20万円程度かかります。結構高くつきます。
別途、検定費用が必要です。検定は自分で申請する(気象業務支援センターが受付窓口です)
か、メーカーに任せる(数万円かかる)かします。
気象庁検定に合格すれば、測定値は、法律上5年間は公開可能となりますが、気圧計の
設置環境によっては、機器の損傷がひどくなる場合があり、5年間性能が維持されるか否か
は環境次第です。特に、水銀を包んでいる皮袋の目詰まり、水銀液面の汚れなどが問題に
成りやすいようです。一見して汚れが目立つものは、検定は合格しない、と言われています。
なお、最近は電気式の気圧計もあり、わずか10cmの高低差でも圧力変化を検出できます。
ビデオ(英語)でフォルタン型水銀気圧計の解説をしています。
メーカーのHP、仕様 気圧の測定等、原理の解説 水銀気圧計、測定値の補正
気象観測の手引き(気象庁)
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