ソメイヨシノの
見分け方

コツをつかめば見分け方は比較的簡単です!
1:初級編
2:中級編
3:上級編

初級編
毎年3月上旬になるとさくら(ソメイヨシノ)の開花予想が気象庁から発表されます。
さくらの開花予想にはソメイヨシノが使用されていますが、桜の仲間にはヤマザクラやカンザクラなどさまざまな桜があるなか、なぜソメイヨシノを使用するのでしょうか?
その理由は、全国的に学校・公園・街路樹などで数多く植えられていること、それから、ソメイヨシノはもともと雑種起源の桜であり、実生(みしょう)で育てることができず、ほとんどの個体が接ぎ木などでふやしたものであり、遺伝的にほぼ同じであるといえるからです。
遺伝的にほぼ同じであるということは、周囲の環境に対する反応がほぼ同じになると考えられます。
すなわち、気候の変化によるソメイヨシノの開花の様子は全国どこへ行っても同じなのです。
それでは、調査対象木のソメイヨシノの見分け方をあげておきますが、これから開花の観測をしようとするからには、まだ花も葉も展開する前にどの樹木が桜(ソメイヨシノ)なのか分からなければいけません。
桜の開花に興味がある方であれば、例えば地元などで、どこに桜の木があるのかご存知である方も多いと思います。
しかし、ご存じなくてもちょっとしたコツで桜の木かそうではないかは分かります。
桜の木の仲間は非常に特徴的な皮目(ひもく)と呼ばれる横方向のすじ模様が見られます。
雑木林などでよく見られるコナラとの違いは一目瞭然です。
まだ花も葉も展開していない状態の樹木で、まず桜の仲間をどのように見分けるには、ことことがポイントになります。
そして、最初に述べたとおり、近くの公園や学校などには必ずといっていいほどソメイヨシノが植えられています。
ソメイヨシノではないかも知れませんが、桜の木はちょっと探せば必ず近くにあるものです。
大きく育った桜の木の下は花が咲く頃には人も集まるものです。是非、近くにある桜の木を見つけてください。

中級編
桜の木が見つけられれば、あとはあまり難しく考えることはありません。
まず街中の公園や学校などに植えられている桜で、大形の一重の白色〜微淡紅色の花を葉が広がる前にたくさん咲かせる桜は、そのほとんどがソメイヨシノであると考えてよいでしょう。
ソメイヨシノは他の桜と比較すると圧倒的に個体数が多いものですから、あてずっぽうで桜の木を選んでもソメイヨシノである可能性が高いものです。
しかし、それではいくら気軽にできるとは行っても開花の調査としては心もとないので、少し見分け方を上げておきます。
実際には調査対象木を選ぶときにはまだ花や葉の様子が分からないと思いますが、まずは開花の時期と個体数から考えてみると、調査対象木として選んだ個体が明らかに周囲の多くの桜がまだ固いつぼみであるのに咲き誇っているとか、周囲の桜がたくさん咲いているのに明らかに全く咲く気配がないという場合は、選んだ桜がソメイヨシノでない可能性が高いと考えましょう。
それから、気象庁からの開花の発表の状況も参考になります。
周囲の気象官署で開花が発表されているのにまったく開花しそうにない、逆にすでに開花してよく咲いているのにまだ近くの気象官署で開花が発表されない、などの場合です。
間違えが分かった時点で調査対象木を変更するのは仕方がありません。
至急調査対象木を変更してください。

それでは、次に注意すべき桜の品種をいくつか紹介します。
桜の品種で最も早く咲くのは、カンザクラの仲間です。
開花の時期が2月中旬〜3月であるため、ソメイヨシノと判断することはないようですが、一見すると開花の時はまだ葉が伸びていないなど、ソメイヨシノによく似ているところがあります。
伊豆半島で早春に咲くカワヅザクラもカンザクラの仲間です。全体的にカンザクラの仲間は花期が長く、花の色もピンク色が目立ちます。
うつむきかげんに咲くことも見分け方のポイントです。
3月になっても咲き続けていますが、ソメイヨシノが咲く頃にはほとんど散っていて葉も展開しています。
琉球地方で桜の開花に使われている紅色のカンヒザクラもカンザクラの仲間と考えてください。
次に、エドヒガンの仲間はソメイヨシノよりもやや早く咲き始めますが、大きな差はなく花期が重なります。
しかも開花期にはまだ葉は展開していません。
長寿の桜として大木になり、各地で観光客が集まる桜として親しまれていますので、十分に間違えてしまう可能性があります。
しかし、慣れてくれば、エドヒガンは花の大きさがソメイヨシノよりも明らかに小さく、花の密度も低く華やかさはソメイヨシノにおよばないことから違うことがわかります。
見分け方のポイントとしては、萼筒(がくとう)の赤味が目立ち下部が丸く膨らんでいる点を上げられます。
枝垂桜の仲間もその多くはエドヒガンの仲間です。

次に花期が重なる桜として、ヤマザクラ、オオシマザクラを上げておきます。
しかしどちらも花期には葉がすでに展開していますので、注意して見れば分かります。この2種はどちらも花だけ見るとソメイヨシノに近いので明らかに葉が出ているかどうかで判断する
必要がありそうです。

上級編
中級編で、カンザクラ、エドヒガン、ヤマザクラ、オオシマザクラなどの桜との違いを解説しましたので、一般的にはこれ以上は特に気にする必要はないと思いますが、調査ついでにソメイヨシノをもう少しご理解下さい。
そして、実際には桜の品種は非常に沢山あり、専門家でも似た桜を見分けるのが難しいほどの多様性があります。
これを理解していただくにはソメイヨシノの起源を知ることも大切です。
ソメイヨシノは一般的に江戸時代の終わりの頃、江戸染井村(現在の豊島区)の植木屋から、「吉野桜」と名づけて売り出されたのが最初であるといわれています。
しかし、このソメイヨシノの起源については、はっきりと決着がついているとはいえません。
桜の研究に力を注いだ竹中要博士(1965年)による、オオシマザクラとエドヒガンの雑種で、オオシマザクラとエドヒガンが共に自生している伊豆半島で発生して、それを植木屋が伊豆から持ち帰ったものであるとする説が有力です。
しかし、他にもソメイヨシノは雑種ではなく独立した種あるとする説や、オオシマザクラとエドヒガンの単なる雑種ではなく、複雑なかけあわせで発生したとする説もあります。
ソメイヨシノの形質を考えると、葉よりも花が先に展開するという性質はエドヒガンに、そして白色大輪の花はオオシマザクラの形態に似ているといえますので両者のかけ合わせによってできたと考えるのは自然かもしれません。

ソメイヨシノは葉がのびる前に咲き、つぼみの頃は少しピンク色ですが開くと微淡紅色〜白色になり、大きさは4cmほどで桜の花の中では比較的大輪になります。
ひとつの花柄から通常は2〜4個の小花柄がのび、萼筒は筒状で上部がわずかにくびれるようです。
小花柄から萼筒基部は黄緑色ですが萼筒の上部ほど赤味が強くなってきます。
これらの特徴は、オオシマザクラとエドヒガンの中間的な形質といえます。
ソメイヨシノに似た品種としてはオオシマザクラとエドヒガンの雑種のグループでイズヨシノ、アマギヨシノ、フナバラヨシノ、ミカドヨシノ、ミシマザクラなどがあります。
これらの種類を見分けるためには、それぞれの桜の特徴を十分に理解し、実物を見て知っていなければ難しく、私達が開花の調査をする時には区別することができないでしょう。
わかる方がいましたら区別してほしいところですが同じとしても結構です。
このような一番注意が必要な品種は、桜の樹種を保存しているような植物園や大規模なさくらの名所に見られます。
また思いもよらない場所に、これらのソメイヨシノに似た桜が植えられている可能性もあります。
桜の品種が分かるような標識がついている場合もありますので、分かったら対応して頂くということにして下さい。

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