4.ソメイヨシノを理解して実際の開花の様子を見よう

ソメイヨシノの見分け方講座

 カンザクラエドヒガンヤマザクラオオシマザクラなどの桜との違いを解説しましたので、これ以上は特に気にする必要はないと思いますが、調査ついでにソメイヨシノをもう少しご理解下さい。そして、実際には桜の品種は非常に沢山あり、専門家でも似た桜を見分けるのが難しいほどの多様性があります。これを理解していただくにはソメイヨシノの起源を知ることも必要なことだと思います。
 ソメイヨシノは一般的に江戸時代の終わりの頃、江戸染井村(現在の豊島区)の植木屋から、「吉野桜」と名づけて売り出されたのが最初であるといわれています。しかし、このソメイヨシノの起源については、はっきりと決着がついているとはいえません。桜の研究に力を注いだ竹中要博士(
1965年)による、オオシマザクラエドヒガンの雑種で、オオシマザクラエドヒガンが共に自生している伊豆半島で発生して、それを植木屋が伊豆から持ち帰ったものであるとする説が有力でした。しかし、他にもソメイヨシノは雑種ではなく独立した種あるとする説や、オオシマザクラエドヒガンの単なる雑種ではなく、複雑なかけあわせで発生したとする説もあります。最近では、岩ア文雄博士(1999年)の江戸・染井発生説も有力視されてきています。ソメイヨシノの形質を考えると、葉よりも花が先に展開するという性質はエドヒガンに、そして白色大輪の花はオオシマザクラの形態に似ているといえますので、起源はともかく、両者のかけ合わせによってできたと考えるのは自然なことかもしれません。

 2004/2/26 かたいつぼみです  2004/3/15 つぼみが膨らんできました
   
 2004/3/24 つぼみが大きくなりました  2004/3/27 やっと開花です
   
 2004/3/31 ここの一房は満開です  2004/4/2 花が散り始め、葉が伸びてきました

 上の写真は昨年(2004年)の東京都中野区で観察されたソメイヨシノの開花の様子です。よくご覧になりソメイヨシノの特徴をつかんで下さい。ソメイヨシノは葉がのびる前に咲き、つぼみの頃は少しピンク色ですが開くと微淡紅色〜白色になり、大きさは4cmほどで桜の花の中では比較的大輪になります。ひとつの花柄から通常は2〜4個の小花柄がのび、萼筒は筒状で上部がわずかにくびれるようです。小花柄から萼筒基部は黄緑色ですが萼筒の上部ほど赤味が強くなってきます。これらの特徴は、オオシマザクラエドヒガンの中間的な形質といえます。このことからソメイヨシノによく似た品種としては、オオシマザクラエドヒガンの雑種のグループでイズヨシノアマギヨシノフナバラヨシノミカドヨシノミシマザクラなどがあげられます。これらの種類を見分けるためには、それぞれの桜の特徴を十分に理解し、実物を見て知っていなければ難しく、私達が開花の調査をする時には区別することができないかもしれません。わかる方がいましたら区別してほしいところですが同じとしても結構です。このような一番注意が必要な品種は、桜の樹種を保存しているような植物園や大規模なさくらの名所に見られます。また思いもよらない場所に、これらのソメイヨシノに似た桜が植えられている可能性もあります。桜の品種が分かるような標識がついている場合もありますので、分かったら対応して頂くということにして下さい。