第94回(2019/03/02)神奈川支部例会 横浜国立大学 教育学部 講義棟6号館

会員発表

会員発表@「近畿北部から山陰の古文書に書かれた気象災害について」:谷岡 会員(関西支部)
古文書に書かれている記録から山陰地方の干ばつや長雨、大雨(台風)、 雪といった気象現象を読み解き分析してくださいました。
特に江戸時代の古文書である"因府年表"の風向の記録から、 鳥取県が北風の時は大雨が多く、 台風が鳥取県の南東側を通過したのだろうと推察された谷岡さんのお考えが大変面白かったです。

会員発表A「『気候正義』(宇佐美誠著)を読み解く」:池辺 会員
気候変動・地球温温暖化問題の最近のはやりが「気候正義」だそうです。
宇佐美誠京大教授の新刊本「気候正義〜地球温暖化に立ち向かう規範理論」 の問題点についてスパッと指摘していただきました。
最後に池辺さんは、"気象正義"という言葉を聞いたら、 気象予報士は身構える必要があると仰っていました。

会員発表B「ダム管理と雨量予報」:和田 会員
私たちの水がめであるとともに治水の要、ダム。洪水調整などその役割は大きい。
そこで、民間気象会社でダム統合管理のための雨量予測に関わられた和田さんから、 "ダム操作と雨量予報"についてお話をしていただきました。
2018年第12号台風の際に、青蓮寺ダム(三重県名張市)で"洪水時貯留操作"が行われたことに対し、 流入量・貯水位の計算には正確な雨量予報が欠かせないこと、ダム操作と注意報警報との関係、 雨の予測がいかに大事かを痛感させられました。

筆保研究室学生発表

会員発表@「サッカー部10人を真夏の締め切った部室に閉じ込めるとどうなるか?」:東さん
屋内での熱中症発生リスクを検証した実験。運動部員たちを被験者としたアイディアがユニークでした。
会員発表A「湘南の風観測〜DIVA湘南2018プロジェクト〜」:赤木さん
相模湾に面した湘南DIVEのテラスに風向計を設置、 相模湾の海陸風の日変化と日較差の結果や局地海風と広域海風について発表。 95日間にわたる地道な観測とデータ分析に拍手!

会員発表B「台風ハザードマップで2018年台風21号の猛威は予測できたのか?」:山内さん
台風ノモグラフにより2018年第21号のハザードマップを作成、 実際の被害データと検証して有用という結果に。
ノモグラフが防災にもっと活用されるといいですね。

会員発表C「機械学習モデルにより台風はどこまで発見できるのか?」:金崎さん
会員発表D「ディープラーニングを用いた台風強度推定と発達予測に関する研究」:加瀬さん

金崎さんと加瀬さんは、それぞれAIの学習技術である機械学習やディープラーニングを使った台風研究を発表。 招待講演の松岡様の講義内容につながる内容でした。
 

招待講演「気象予測とAIの現状と今後の展望」:松岡 大祐 様(海洋研究開発機構/科学技術振興機構)

さまざまな分野で、今や私たちの身の回りで盛んに使われている人工知能(AI)技術。 そのAIを気象と結び付けて最先端の研究をされているのが、海洋研究開発機構/科学技術振興機構の松岡大祐様です。
講演では、まずAI(人工知能)の基礎について分かりやすくご説明いただきました。 そして気象分野、特に台風予測にどのように応用されているのか解説いただきました。
発生前の熱帯低気圧の予兆を示す雲(熱帯低気圧のタマゴ)を、AIを使って精度よく検出する手法は、 これまでの物理方程式に基づく気象モデルを用いた予測とは異なり、 気象分野におけるAIの更なる可能性を大いに示唆する内容でした。
なお台風以外でも前線解析などにも応用研究されており、もう少し講義を拝聴したかった!と感じました。 貴重な機会をいただきました松岡様にお礼申し上げます。

集合写真



懇親会

和食個室居酒屋「咲くら 横浜店」
筆保弘徳先生及び筆保研究室の学生達も参加。
学生諸君の瑞々しい感性に触れ、彼らの前途にエールを送ったひとときでした。
  

参加者数

例会60名(懇親会44名)

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