第71回(2013/07/20)神奈川支部例会
かながわ労働プラザ 第3会議室

講演

気象研究所 荒木健太郎 研究官「夏季関東地方での都市型豪雨の解析的研究」
“ゲリラ豪雨”という言葉をなくしたい! 予測が難しいと言われている局地的大雨について、予測は不可能ではない、 という熱く強い想いで日夜研究に取り組んでおられる荒木研究官から、お話を伺いました。
予測に必要なものとは、まず相手のことを知ること、次に自分に何が足りないのか 知ること、そして足りないものを補って再度アプローチすること。 この3つのプロセスを着実に進めることによって、予測は可能になると冒頭でお話をされ ました。そのための要件は、ドップラーレーダーや衛星による精緻な観測、データ同化の 更なる深化、対流発生のメカニズムとトリガー、そして実際の事例検証等々、正に観測・ 理論・検証の総力を挙げて取り組む姿に、我々みな共感して聴講させていただきました。

会員からの話題提供1

横浜地方気象台 高井 元治 次長「2012年9月24日の大雨事例」
今回の例会は、「大雨と台風」をテーマにして開催されましたが、特に大雨について 話題提供でも多く取り上げられました。 横浜地方気象台の高井次長様からは、この大雨を予報する立場、現場からの貴重な お話を伺うことができました。
この時の大雨は、京浜急行電鉄の車両が脱線する事態を招いたことでも、記憶されて いる方もいらっしゃるかもしれません(実際、聴講していた会員の中で、ご家族が事態に 遭遇した体験を紹介していただきました)。 圧巻は、気象台における防災情報の発表が、どのようなプロセスを経て、どのような 状況下で何をもとに決断し、何を伝えようとしたのかということです。聞いているだけでも 予報官の方々の極限における判断の重さを感じ取った内容でした。

会員からの話題提供2

和田 会員(神奈川支部)「渇水と大雨」−1994年近畿地方の夏の渇水とそれを解消させて大雨について
近江八景としても名高い、「堅田の浮御堂」、普段はその端整な姿を琵琶湖の湖面に 映しているのでしょうが、琵琶湖の水位が低下し湖底から見上げる浮御堂の写真が 紹介されたときは、いささかショックでした。1994年の渇水は、それほど深刻な 事態だったようで、現に聴講していた会員の中には、当時を鮮明に記憶しており 渇水対策のため真水を購入したり、運搬したり、と思わぬ共感を得た話題でもありました。 和田会員からの、渇水期および大雨による降雨期における雨量と、淀川を始めとする 各水系の水位についての考察も明快で、皆さん興味深く聞き入りました。

会員からの話題提供3

山田 会員(神奈川支部)「インドモンスーンと2005年のムンバイ市豪雨」
今年のつゆ、特に関東地方に在住の方々は、いつのまにか明けてしまった様に 感じられるのではないでしょうか。このつゆならぬ梅雨前線を遥か西方に辿っていくと、 インド洋からユーラシア大陸に吹く季節風、モンスーンに突き当たる訳ですが、 言葉でいくら説明されても、実感にはかないません。 今回、山田会員からの現地体験報告は、多くの写真とともに、現地体験ならではの 貴重なお話を聞くことができたと同時に、その気候学的・気象学的分析も説得力のある ものでした。 インド人は、モンスーンを“恵みの雨”というそうです。また、ムンバイの雨は 爆発感を伴って、降るそうです。同じ雨でも、いろいろですね。

会員からの話題提供4

永田 会員(西部支部)「雲の動画紹介」
今回、福岡からはせ参じてくださった永田会員からは、最新の機器を駆使して撮影した 雲の動画を披露していただきました。普段、何気なく見ている雲でも、継続的に動画で 見ると、流れる方向や形状の特徴がよくわかり、皆さん感心して見入っていました。 油山方面にたなびく雲、印象的でした。

新企画3分間話題提供

梶原 会員(神奈川支部)「露点温度を測る」
今回は3分間というか極めて短時間での発表だったため、いつもの梶原ワールドに 欠かせない実験器具等の展示はありませんでしたが、身近に露点温度を測れる器具を スライドで紹介いただきました。
懇親会場では実機が引っぱりだこ!
人気を集めていたのは、言うまでもありません。

苦瓜 会員(東京支部)「タジキスタン・ピアンジ気象観測所の様子」
前回の例会では、ウズベキスタンの紹介がありました。今回はタジキスタンについて、 苦瓜会員から紹介いただきました。国名の響きから近隣かと思いきや、隣国同士でした。 このタジキスタンについて、豊富な写真をもとに、現地での体験を交えて説明して いただきましたが、やはり興味深かったのが、気象観測所の様子でした。 施設や観測機器は、決して最新とは言い難いもののようでしたが、ここでの観測データが 全球を廻っていると思うと、感慨深いものがありました。

懇親会

「華勝楼」
懇親会は、夏休みに入って最初の土曜日で賑わう中華街「華勝楼」で開催し、 大いに盛り上がりました。

参加者数

例会44名、懇親会39名

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