第62回(2011/5/14) 神奈川大学 横浜キャンパス

招待講演 

講演者:神奈川大学工学部物質生命化学科教授 井川学 様
招待講演:「丹沢の酸性霧と森林の衰退」
 1986年から87年カリフォルニア大学で霧の研究をされ、88年帰国以降丹沢大山において霧の観測を続けていらっしゃいます。酸性霧による事件として1952年12月ロンドンがpH1.7の酸性霧に覆われ一週間で4000人以上の死者がでた。(暖房の石炭からのイオウ分が原因)雨は通常pH4〜5(5以下を酸性雨)、霧はpH2〜6。霧は雨に比べ液量が少ないので濃厚になりやすく、液滴が小さいため表面から汚染物質を吸収しやすいため。大山下社に自動霧水採取器を設置し、霧水中の成分を分析したところpHの低い霧には硝酸イオンが多かった。大山は南西、南東からの滑昇霧が発生しやすい。大山の北側檜洞丸では立ち枯れが少ないことや、オゾン説、虫害説、酸性雨説に対する反証をあげ、大山のモミ、ブナの立ち枯れは酸性霧によるものと、説明されました。

話題提供

山本 会員「気象情報の利用と安全運航〜パイロットの視点から」
 飛行中の気象情報の入手はヘッドフォンによる無線情報とACARS(Aircraft Communication Addressing & Report System)による文字情報だけ。パイロットに必要な情報としては、離着陸時には、 メソスケール現象の起きるポテンシャル予報、積乱雲、レーダーエコーなどのナウキャスト 情報、飛行中には、実況、ジェット気流、前線面の変化、積乱雲の発生、発達など。 現在は、いろいろな断片情報を組み合わせているが、気象の立体構造がビジュアルに 見えるシステムの開発が望まれる、とのこと 離着陸時の風の影響やRVR(滑走路視距離)のことなど、わかりやすく 説明していただきました。
横浜気象台 永井佳実 様「2011年3月31日の雷について」
 3月31日の天気図には雷の発生が予想されていなかった 数値予報モデルでは、--- 850hPa,500hPaでは安定、降水量もそれほど出ていない、 平衡高度も高くない、ただし、渦生成パラメータは少し強く出ている。---であった。 実際には、自由対流高度が高く15時30分頃 雷が発生。 4月,5月の春季にも横浜地方で雷の発生は比較的多い 条件としては、@下層の湿潤 A風の収束 B上空の寒気 などが必要
千葉 会員「いわき市被災状況」
 友人宅の被災状況を写真で紹介してくださいました。
津波が押し寄せた遡上痕が、家の外壁に、胸の高さ位置で残っていました。
梶原 会員「晴雨予報グラスの水位について」
 野球ボールほどのガラス球の下方から細い管が上方に伸びていてその 端末は大気に開放。中に水を入れ気圧の変化で管内の水位が上下し 気圧の上下を知ることができる、というもの。 水が存在するとボイル・シャールの法則が成立しない、とか 管から蒸発する水分を補正すると気圧の実測変化に比較的合う とか、神奈川大学での当日の水位を計算するプログラムを作って 計算してみたり、とか物理学の一端を披露してくださいました。 晴雨予報グラスは、東急ハンズで1500円程度で売っているそうです。
「今年のスギ花粉飛散状況」
 気温と花粉量のデータから前年の8月よりも7月の気温が影響しているらしい 雨が降ると少ない、雨上りの翌日は多い、風が強いと多い。 花粉は昼間だけでなく夜間も飛んでいる。 花粉の多い年の翌年は少ないと言われているが、果たして来年は?
池辺 会員「北極のオゾンホール」
 1980年の南極は健全だったのに、2000年にオゾンホールが3000万Km2に拡大 後、フロン規制もあって2010年には2000万Km2に減少している。 南極では、寒い期間が長いと成層圏雲ができ、これによってオゾン層の破壊が起こる。 北極では、冷え込みが弱いので、成層圏雲ができず、オゾン層破壊が起きない。 というのが定説であった。しかし、2010年から2011年にかけての冬季、北極上空に極渦が発生、1月半ばから 3月まで強まった。この寒冷によってオゾン層が破壊された。 オゾンホールの破片が南下し漂流すると、日本でも紫外線の影響が強まる。
千々木 会員「横須賀イベント」
 通算、第3回目になるイベント。 しかし、開催日は東日本大震災の2日後の13日。それでも実施されたそうです。 当日は、自衛隊も米軍も東北の支援に向かって不在だったため、見学は米軍基地内 ヨコスカ気象海洋隊だけ。出席者は3名だったそうです


出席者数

例会出席者:52名  懇親会出席者:34名


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