長利研 第43回例会

 〜 研究会”日本酒土氣”との合同例会 〜

日 時:2013年1月26日(土) 14:30〜17:00
場 所:東京芸術劇場(池袋) ミーティングルーム5

「気候変動と音楽 〜天明・天保の飢饉〜」

@マウンダー極小期のころの天候  語り:藤井会員
 江戸時代は小氷期にあり、江戸では時に1m以上もの積雪が見られたこともあったようだ。17世紀末〜18世紀初めは冷害で大凶作となる年が続くこともあった。マウンダー極小期のころは台風による災害が少なかった可能性があるが、江戸時代末期から気温がぐっと上昇し明治時代は台風災害がぐっと増えたようである。
 このマウンダー極小期の時代に生きた有名な作曲家であるバッハ/フランス組曲を池辺会員がを演奏し魅了した。そして、同時代のパッヘルベル/カノンを井上会員・重田会員がフルートで2パートに分かれ、田家会員がクラリネットで低音部を演奏した。ピアノパートは東大の宮原氏が演奏を披露、美しいアンサンブルが会場に響いた。
 
A天明・天保の飢饉と天候     語り:田家会員
 江戸時代はたびたび飢饉に見舞われたことが知られているが、詳しい資料に基づき天明の飢饉の要因・天保の飢饉の要因について具体的に解析した。
 また、天明の飢饉のころ西欧ではモーツァルトが活躍していた時代である。田家会員によるモーツァルト/クラリネット五重奏曲K.581の第二楽章の演奏(伴奏:池辺会員)や、宮原氏による天保の飢饉と同時代の名曲ショパン/前奏曲「雨だれ」の初見演奏を聴きながら、天候不順の続いた当時を偲んだ。
 幕末は気温がぐっと上昇、根本会員のソロによる「宮さん宮さん」を聴いたり、「さくらさくら」をフルート演奏(井上会員・重田会員)とともに参加者全員で歌ったりしながら、暖かくなった幕末の気候の気分に浸った。
 
Bダルトン極小期について     語り:宮原氏
 19世紀初頭に起こった極小期であるが顕著ではない。太陽活動低下が気候変動の一因になる可能性がある。極小期の前には長い黒点周期が現れるが最近の太陽活動にもその現象が起こっている。現在の活動はダルトン極小期と同等のレベルにまで低下する可能性が高い。
 メンデルスゾーン/ベニスの舟歌(天保の飢饉と同時代の曲)を池辺会員が見事に演奏しフィナーレとなった。

◎研究会”日本酒土氣”より    野瀬会員
 「日本酒(地酒)を知り、薀蓄を傾けるとともに、気象予報士として醸造地の気候風土を踏まえつつ、お互いの親睦を図る」という目的で会が結成され、これまで例会、研究発表、見学等の研修をしたり、日本酒フェア(池袋)、酒まつり(東広島市西条)などに参加したりした。
 酒にまつわる歌「酒は泪か溜め息か」など音楽との関わりや、音楽振動トランスデューサによる音楽振動醸造についても触れられ、この醸造法による「モーツァルト」(金井酒造;神奈川県秦野市)という日本酒が懇親会で振舞われた。